Hokkaido Centennial Memorial Tower Fun

【疑問⑥】これを調査と呼んで良いのだろうか?

 

原状復帰で28億円、現状維持で26億円とした平成29年調査の積算の問題点を検討し、不可思議な算定を発見しました。どのような調査をした結果、あのような積算になったのか? 平成29年の調査内容を検証しました。積算以上にずさんでした。こんな「調査」で解体されるのならば記念塔に寄せられた道民の思いは報われません。

 

■何を根拠に「不可能に近い」と結論したのか?

北海道百年記念塔の解体を決めた空間構想の41pには、
 

(1)専門コンサルによる調査結果(平成29 年度実施)
ただちに倒壊する危険性はないものの、塔内の展望室に立ち入りできるように原状復帰した場合においても、今後、部材の腐食等による不測の落下事故を完全に防ぐことは、物理的にも不可能に近いことから、その対策として、立入禁止エリアの設定(フェンスの設置)、落下事故防止用屋根付きの通路が必要。

 
とあります。このことが道議会答弁などでなんども引用され、解体の論拠になっています。
 
「専門コンサルによる調査」が平成29年調査のことであり、空間構想は同報告書22p(①)を要約引用したものと思われます。この平成29年調査ですが、空間構想21Pの「構想策定経過」には、どういうわけか記載がありません。
 

①平成29年調査報告書22p

 
さて平成29年調査は「塔体は常に過酷な環境下にあるため、経年とともに二次部材の腐食、溶接の破断、錆片、錆粉等の不具合が進行すること、不測の落下事故を完全に防ぐことは物理的に不可能に近く」としています。どのような調査によってこのような結論を導き、空間構想にも引用されることになったのでしょうか。
 

■2週間に渡った平成2年の物理調査

平成29年調査を見る前に、比較として以前の調査の様子を紹介します。
 
このグラフ②③は平成2年の日本建築学会による「北海道百年記念塔保守管理計画策定調査報告書」に掲載された塔体内部の湿度を昭和55年に行った調査と比較したものです。
 

平成22年調査33p

平成2年調査36p

 
記念塔は、昭和55年の調査により内部に湿気が籠もり塔体を内側から腐食させていることが判明したため昭和56年から「湿度改善工事」が行われました。平成2年調査では、この「湿度改善工事」によって湿度改善が図られたのかを塔内8カ所(NO4欠番)に湿度計を設置(⑤)し、平成2年9月27日から10月10日まで2週間にわたり計測しています。
 

⑤平成2年調査30p

 
そして平成2年調査は、この「湿度改善工事」が「その効果は極めて有効であった」と評価しています。実は平成29年調査も「最下層に土間を設けたことで塔内の高湿度が改善され良好な環境となっており、鋼材に対しても腐食進行の防止策となっている」として、昭和55年の改修工事の効果を認めているのです(⑥)。
 

⑥平成29年調査報告書18p

※引用中「第2次調査では」とありますが第1次調査の誤りです
 
 

 

■物理調査をしなかった平成29年

昭和55年、平成2年の調査がそうであったように、調査とは客観的なデータに基づいてこそ初めて調査と呼ぶことができます。その上で、平成29年調査はどのようなデータによって「不可能に近い」としたのでしょうか?
 
平成29年調査報告書を隅から隅まで見ました。しかし、報告書には、グラフ1つ、計数表1つ見当たりません。平成29年には湿度計を設置して計測するような物理的な調査はまったく行われなかったのです。
 

■分析評価無し、写真の撮りっぱなしが調査!?

では調査として何が行われたのでしょうか? 実際には「写真撮影」だけだったようです。調査報告書の別冊資料には44ページにわたって写真が掲載さています(下段参照)。もちろん写真を撮影し、現況を確認することは調査の基本ですが、問題は平成29調査報告書には現地調査の結果をとりまとめ、解析したセンテンスが見当たらないことです。
 
これは平成2年調査報告書の24ページですが、現況写真一つひとつについて技術的評価がなされています(⑦)。
 

⑦平成2年報告書24p

 
これは昭和55年の調査報告書の22ページですが、こちらは4等級にわけて分類して評価しています(⑧)。
 

⑧昭和55年調査22p

 
このような評価が平成29年調査報告書には一切ありません
発見した不具合カ所を分析評価して初めて「調査」と言えるのであり、そうした姿がまったく認められない平成29年調査を「調査」と呼ぶことは憚れます。
 
 

■たった1回の現地調査、わずか19日のとりまとめ

どうしてこのようなおざなりな「調査」になったのでしょう。平成29年調査報告書の2pを見ると、その理由が分かるような気がします。
 
平成29年調査はわずか2カ月の調査でした(⑨)。平成29年8月11日に調査が始まり、28日には、解体撤去したあとに基礎をどうするか、という打ち合わせを札幌市としています。
 
現地調査を行ったのは9月15日。現地調査からわずか19営業日後には報告書の提出です。1回だけの現地調査、物理試験もなく、非常な短期間の検討で、今後50年間の正確な修繕計画を立てられるとは思われません。
 

⑨平成29年調査報告書2p

 
十分な解析を行う時間が無かったことと思われますが、それならばなおさら現地調査を早く行うべきではなかったのではしょうか。すくなくとも解体のための札幌市との打ち合わせと順番は逆であるべきでした。
 
さて、まとめとして、空間構想が述べている、そして今も道が議会答弁で述べている「部材の腐食等による不測の落下事故を完全に防ぐことは、物理的にも不可能に近い」の根拠となった記述を平成29調査から発見することはできませんでした。
 
仮に「物理的に不可能」とするならば、この調査に挙げらている26億円とも、28億円ともなる修繕費は一体何のための費用なのか分からなくなります。
 
この記述が〝万物は時間とともに古びる〟という常識論に基づき、どんなにがんばっても100%完全に防ぐことはできない──という意味であれば理解できないことなくもない。ただ、そうしたことであれば、およそすべての建造物は解体の対象となるでしょう。
 
客観的なデータや具体的な解析に基づかず、調査に立ち会った職員の印象や感想、または常識論で私たち道民の財産が解体されるのはやりきれません。
 
北海道百年記念塔解体で大きな役割を果たした「平成29年度北海道百年記念塔維持管理計画策定調査」の主要な疑問を挙げましたが、他にもたくさん首をかしげたくなる部分はあります。
 

総じてこれは解体に世論を誘導するために行われたアリバイ調査だったのではないかと思わざるをえません。(了)

平成29年度北海道百年記念塔維持管理計画策定調査 別冊資料(1〜10p)

 

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