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北海道百年記念塔を守る会 事務局
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いくつか平成29年調査の修繕費の問題について指摘しましたが、調査は記念塔の原状をどのように見ているのでしょうか。「第3章 今日までの損耗状態と保守管理の状況」という章(といってもわずか2ページと3行ですが)に書かれています。一読すると塔の深刻な状況が示されているように見えますが、そこには人をたぶらかすトリックがありました。
過去の調査・措置を踏まえて原状を把握することは、このような調査ではもっとも基本的な姿勢です。これは平成2年調査における表①「昭和56年以降の保守管理措置と評価」というです。昭和56年の築後10年に行われた大規模改修移行の修繕内容を表にまとめ、平成2年時点の状況を評価しています。
そして各部の状況に対して行うべき措置を表で示したものが表②「各部の損傷に対する措置計画」です。非常に明快です。
平成29年調査でこれにあたるものあるのでしょうか?
平成29年調査には「保守管理措置と評価」も「措置計画」も見られません。かろうじてそれらしいものは17-18pの「第3章 今日までの損耗状態と保守管理の状況」です。
3.1記念塔 ア「主体鉄骨部」はこうなっています(③)。非常に読みずらく難解です。それでも我慢して読み進むと、記念塔の老朽化が進み大変な状況になっている──という印象を抱かせる文章となっています。
3.1記念塔 イ「外板部」はこうなっています(④)。
まず指摘しておきたいことは、これら文章は「ここでは、これまでの調査報告書に基づき」とあるように、これまで行われてきた調査とその対応としての修繕措置をまとめたものなのです(⑤)。決して「今回の調査に基づき」ではないことを強調しておきます。
⑤平成29年調査17p
まったく定義づけもなく「第一次調査」などという言葉が出てきますが、おそらく1次調査(昭和55年度)、2次調査(平成2年度)、3次調査(平成13年度)、4次調査(平成23年度)なのでしょう。
読みにくいのは、こうした報告文では必須の5W1HのうちWhoとWhenを抜かして書いているためであり、とても技術者の文章とは思えません。
さて、この文章は、過去の調査とその対応をまとめたもので、わかりやすく色分けします。
赤)過去の調査で判明した課題
青)それに対して対応した過去の措置
残った黒字が一般論、現状認識となります。
竣工後10年の調査では、鉄骨本体の発錆状況は一般的な傾向より進行が速くその発錆要因は、漏水、高湿度、塵埃堆積と水湿滞留が起因していた。その状態で耐用年数を推算すると無処理のままでも今後30年は危険がないと述べられている。従って調査時期を加算すると40年となる。
しかし、その後の錆び止め塗装を毎年一定サイクルで実施していることや塔内の高湿度の環境改善を行ったことなどを考慮すると適切な維持管理を今後も継続することで危険性は無いと判断できる。
但し、その後の調査から局部的に損耗の進行が著しい接合部(ポケット部)については、塵埃の撤去や錆び落し、再塗料を繰り返し措置してきた。
1階の柱脚部はコンクリートで根巻きされているが水平なため水湿が絶えなく腐食の原因になっていたためモルタルで水勾配を施し現在は良好な状態を維持している。
また最下段の水平梁は降雨時の被水で腐食が母材まで達していたため補強を行った。
従って全体的には現状の鉄骨本体は、第一次調査で塔内清掃と表面の錆処理・再塗装を10年サイクルで実施する計画を策定し、概ね今日まで実行されてきていることから、最低限必要な状態を維持継続している。
この文章は、レトリックに惑わされずに読むと、北海道百年記念塔の主体鉄骨部の原状は「必要な状態を維持継続」していると理解することができます。
同様に外板部、すなわちコルテン鋼のパネルが貼ってある外側の状況を見てみましょう。
外板を留めるため曲面に沿って接近した補助骨組として角形鋼管(□ー125X125X5)を縦方向に配置している。
鋼管は縦使いなため塵埃堆積がなく発錆は比較的少ないが、角形鋼管と外板を緊結する取付ピースの接合部が塵埃堆積と水湿滞留で著しく腐食しているため補強した。
また同様な要因で脚部も母材が欠損するまで腐食している所はアングルヒースにより補強した。
その作業は全接点数が数千箇所もあるため腐食の著しい箇所から順次補強を進めているが、第4次調査以降も補強、防錆措置を継続している。
外板に使用されている耐候性高張力鋼板は、無塗装で数年間かけて表面に密で硬い酸化皮膜(安定錆)が形成され腐食の進行が防止される特徴がある。
ただし、安定錆の形成は表面が外気にさらされて適度な乾湿が繰り返され、風雨によって表面に浮いた粉錆が洗い落とされることが条件となる。
外板は、風向きの関係で各面で若干の色調の差異があるものの外板表面に安定錆が形成されている。問題点は、水湿に触れたまま乾燥する機会の少ない箇所での錆の進行でトラブルが発生している。
外板と縁アングルの接合面、縁アングル相互の接合面、塔体内部の凹凸部に顕著な発錆が認められ、特に接合面の発錆は外板の変形や溶接部の破断を伴って更に進行すれば外板の剥離、落下を招く危険性がある。
その防止策として、外部からの補強は不可能なため内部から外板と縁アングルとを断続溶接により剥離危険の予測される箇所から5年程度かけて順次補強した。
また、凹凸のある目地部は複雑な形状から水湿状態が解消出来ない箇所は溶接破断やボルト腐食が認められるため清掃、錆びの除去、ボルトの更新を継続的に行なってきた。
従って経年と共に損耗箇所は広がる可能性があり、引き続き塔内の点検を慎重に実施することが必要である。
「外板部」の最後は、非常に不可解なまとめかたをしています。「問題点」に対して「防止策」として「順次補強した」「清掃、錆びの除去、ボルトの更新を継続的に行なってきた」のに、「従って」「損耗箇所は広がる可能性」があると続くのです。
「継続的に行なってきた」のに「損耗箇所は広がる可能性」なら、接続詞は「従って」ではなく、「しかし」「それにもかかわらず」と逆接の接続詞でなければなりません。
本来は「従って」の前に平成29年調査の「調査」によって判明された事実がなればなりません。そうした部分がなく、結論部にはネガティブな内容を持ってきたかったので、文法として破綻しています。
このように過去の調査で判明した問題と、それに対応した措置の対比となっていますが、
平成29年調査が記念塔の老朽化・危険性をアピールしたいのであれば、このようなレトリックを使わずとも、エビデンスとして調査結果を示せば良いだけです。平成29年調査はいったいどのような調査を行ったのでしょうか。次回で紹介します。
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