Hokkaido Centennial Memorial Tower Fun

私たちは北海道百年記念塔の解体取り消しを求めて訴訟を起こしましたが、ノスタルジーだけで訴訟を起こしたのではなく、公有財産の善管義務を定めた地方財政法8条に対する明確な違反を示す数々の証拠を持っています。
 
百年記念塔の解体を決めた2018年12月の「ほっかいどう歴史・文化・自然『体感』交流空間構想(以下「空間構想」)」は「利用者の安全確保や将来世代への負担軽減等の観点から、解体もやむを得ないと判断し、その跡地には、新たなモニュメントを設置することとします(発展的継承)」としました。道は「安全確保」と維持管理の「コスト」を解体の理由に挙げているのです。それぞれを検証しましょう。
 

道は、根拠・情報を公開せずに「危険」と説明

解体を決めた「空間構想」は、41pで「安全性の検討」と題して4つの論拠を挙げています。このうち「(1)専門コンサルによる調査結果(平成29年度実施)」「(2)専門家ヒアリングでのご意見」「(3)外板の素材メーカーによる調査結果(平成30年度実施)」について、情報公開請求を行ったところ全面黒塗りでした。
 
道という公的機関が、検証のできない黒塗り資料を論拠にして何かを説明してはならないのは言うまでもありませんが、道は今もこれら資料を「危険性」の根拠にして「丁寧な説明」を繰り返しています。専門コンサルによる調査は「平成29年北海道百年記念塔維持管理計画策定調査」というもので、情報公開請求により初めて存在が明らかになりましたが、未だに道は公開を拒んでいます。
 
百年記念塔に倒壊の恐れがあるのでしょうか? その恐れのないことは道も認めています。道が危険視するのは錆片や外板の落下であるといいます。鉄塔だけに錆片の落下は他の構造物よりは多いことは想像できますが、どのくらい錆辺がどのくらいの範囲で落ちているのか、そうしたデータはまったく示されていませんし、その説明も問題です。
 

 
最近になって道は、平成30年9月に台風21号の影響で長さ2mの部材が落下したことを「老朽化」の根拠としてマスコミ等に盛んにアピールしています。これは平成4年に後付けされた当初設計にない部材で、解体に反対する建築家などの専門家グループは施工不良を疑っています。部材は階段踊り場から容易にアクセスできるところにあり、老朽化よりも管理責任が問われるべきです。
 

 
 

本当に莫大な維持管理コストがかかるのか?

「空間構想」は、41pで今後50年間でかつてのように内部に立入できる場合は28億円、入れない場合は26億円と試算し、これがマスコミに大きく取り上げられて、維持管理の高コストが印象づけられました。令和3年に百年記念塔の解体工事の実施設計が行われましたが、このとき解体設計業者の手で新たに維持管理費の積算見直しが行われ、それぞれ30億円、28億円になりました。
 
百年記念塔では昭和55年からおよそ10年毎に状況調査が行われ、それに基づいて10年間の維持管理計画が建てられています。私達が情報公開制度によって入手した平成23年計画では、平成33年(令和3年)までの10年間は年間平均800万円で問題なく維持できるとしていました。
 
しかし、その6年後の平成29年計画で突如「大規模改修」という項目が登場し、年平均維持管理費が800万円から5200万円(塔に立ち入らない場合)に急騰しました。下記が空間構想の引用された資料です。 この29年計画を情報公開請求で入手すると、全体の8割弱を占める大規模修繕の積算根拠はわずか19行。しかも驚くべきことに経費の内訳が無いのです。
 

 

平成25年までに「解体」は決まっていた

道は、これまで一貫して平成30年の「北海道150年」を見据え、百年記念塔を含む野幌森林公園記念施設地区のあり方検討を平成28年から始めたと説明しています。当時から道のすすめ方に「解体ありき」「アリバイ的」との批判がありました。
 
私たちは情報公開請求で、その3年前の平成25年度に百年記念塔の解体が具体的に計画されていた証拠を入手しました。「平成25年度北海道百年記念塔維持管理計画策定報告書」(平成26年1月31日)というものです。この中ですでに基礎を撤去する場合と残す場合の二つで経費と工程、施工方法概略が示されていました。
 

 
平成25年計画はさらに「解体を行う場合」は、平成33年までの「第4次計画」を破棄し、4年間の「最低限の保守管理」に移行することが記されていました。そして実際に1年前倒しの平成24年から維持管理費は半減となり、平成29年からは全く行われなくなりました。
 

公有財産への善管義務違反

おそらく道は平成24年から25年にかけて内部で安易に百年記念塔の解体を決定し、学識経験者による有識者会議の議論を誘導して「解体」の答申を出させ、平成30年に解体する運びだったのでしょう。そのことを前提に平成24年から維持管理費を減額し、さらに平成30年からは放棄してしまいました。
 
しかし、公開資料を読むとどうやらごく少数が強固に解体に反対したようです。このため平成30年解体が実現せず、解体をマスコミや議会を説得するために、さまざまな根拠を「創作」する必要に迫られたと思われます。
 
私達はこの推測を具体的に裏付ける証拠を入手しました。情報公開請求では「文書不存在」の壁に悩まされますが、これにより道の不作為を立証できるのではないかと考えたのです。それがこの「公文書一部非開示決定通知書」です。
 

 
これにより道が平成29年度から修繕工事(メンテナンス)を放棄したことが立証されました。さらに驚きなのが、平成24年から事実上、定期点検が行われていない事実です。常々道は「公園利用者の安全確保」を解体の理由に挙げていますが、安全優先ならば、そして道の言うように塔の老朽化が申告ならば、なおさら定期点検は決して疎かにできないはずです。
 
自治体には公有財産の善管義務(公有財産法8条)がありますが、百年記念塔に対する道の態度はまさにこの法律への明確な違反ではないでしょうか。私たちが、百年記念塔の解体差し止めを求めて道を訴えた法的根拠もこれになります。
 

 
最後に令和4年7月に私達が行った内部調査の様子を紹介します。道の長年にわたる管理懈怠にもかからず、塔内部は驚くほど健全で、危険の匂いは微塵もありませんでした。
 
コルテン鋼を使用した建物は特有の錆が理解されず、誤解のなかで次々と解体されていきました。道はこの特性とともに老朽化を印象づけ、解体しようとしていますが、決して一般が見ることができない内部にこそ真実はあるのです。

 

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北海道百年記念塔の足元に掲げられた建立記にはこのように書かれています。
 
 「先人の偉業を長く後世に顕彰し、慰霊の誠を捧げるとともに、輝く未来を創造する決意を表徴として、道民の総意をもって北海道百年記念塔の建立を企図したところである」
 
こうした誓いのもとに建立された百年記念塔を解体して道は、その跡地に「多様性と多文化共生」のモニュメントを建てようとしています。今解体されようとしているのは、私たち日本人が古来より大切にしてきた「現在・未来を含む3世代の基をなす祖先への尊敬の念を持つ生き方」そのものなのではないでしょうか?
 
この北辺の大地で行われている問題は、あなたのまちで明日起こる問題かもしれません。北海道百年記念塔を守ること、それは日本らしい日本を護ることです。みなさまには、この問題を〝我がこと〟と受けとめていただき、百年記念塔保全活動にご協力をお寄せいただければ、これ以上の喜びはありません。よろしくお願い申し上げます。
 


上記、説明画像中の図版などは下記より引用しました
・「『北海道百年記念広場(仮称)の整備等に関する説明会』資料」北海道生活文化部文化局文化振興課・2022・2
・「『北海道百年記念広場(仮称)の整備等に関する説明会』質疑応答」北海道生活文化部文化局文化振興課・2022・7
・「平成25年北海道百年記念塔維持管理計画策定調査報告書」ドーコン・2013・6
・「平成29年北海道百年記念塔維持管理計画策定調査報告書」ドーコン・2017・10
・「北海道公文書一部開示決定通知書」北海道・2022・6
 

北海道百年記念塔を守るための活動資金にご協力をお願いします。

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