3 設計競技実施要項
永く誇り得る道民の総意をこめた記念塔
昭和42年6月10日、北海道百年記念塔建設期成会は「北海道百年記念塔設計競技実施要項」を発表した。要綱の冒頭、期成会長である町村金五北海道知事は「まえがき」として次のように述べている。これは期成会が全国の建築家に示した、記念塔建設の理念であり、コンセプトであった。
明治2年に蝦夷地を北海道と改め、開拓使を置き積極的な開発を進めるようになってから、明年は百年を迎えようとしております。
未開の地北海道は、僅か百年の間に当時10万余人の人口が今日520万人を数え、産業経済文化のあらゆる分野においてたくましく発展し、日本経済に大きく寄与する土地としてますます躍進が期待されています。
北海道のこの一世紀の目覚ましい開発と発展は、わが国民の歴史的な偉業であり、今百年を迎えようとする道民の深い感動と誇りであります。
われわれ道民が今日の生活を享受できるのは、国の積極的な政策はもちろん、開拓者精神に燃えた先人の高い理想と叡智と苦労の所産であります。
北海道百年に際し、開拓の功労者として讃えられている方々はもとより、それぞれの職分において北海道開発のゆるぎない基礎をつちかってくれた多くの方々に対し、感謝と慰霊の誠をささげ、長くその偉業えたいという念を禁じえません。
また、開発の偉業をつぎ、豊かな発展の可能性を開発し伸張させていくものは、我々とこれを受け継ぐ道民であります。この機会に、次の百年に向かってたくましい郷土を建設するわれわれ道民の決意を表明したいと思うものであります。
幸い北海道においては、札幌市、江別市及び広島村にまたがる野幌天然林を中心に百年記念事業として道立の一大記念公園の建設が進められております。
われわれは、百年記念事業として、道民多数からもたらされたもろもろ顕彰碑・慰霊塔・感謝の碑の建設、および開発の決意・建設の誓いを象徴する建造物の建設提案を集約し、記念公園の中心施設であり、北海道の新しいシンボルとして永く誇り得る道民の総意をこめた北海道百年記念塔を建設することと致した次第であります。
なにとぞ全国の専門家諸氏がこの設計競技に参加され、優れた設計案を寄せられますよう希望してやみません。
昭和42年6月10日
北海道百年記念塔建設期成会会長
北海道知事 町村金五
以下、主要項目を拾ってみる。
●目的
北海道百年記念道を優れた建造物とするため、この要綱に基づく設計競技によって広く作品を募集する。
塔建設の目的は、期成会長である町村知事の言葉に尽くされているため簡素な文言となっている。
●応募者
・応募者は、建設士法に基づく一級建築士であって、今この要綱に定める登録手続きをしたものでなければならない。
・応募者は、建築その他の専門家と共同設計することができる。この場合、代表者が前項の規定を満足すればよい。
・候補者の提出設計案は1つに限る。この場合、2人以上の共同設計者が1人の応募者とみなす。
応募者は、企業や設計事務所、グループでの参加は認めず、あくまでも〝一人の設計者〟であることを求めた。
●要綱の交付
この要綱は昭和42年6月10日より7月10日までに下記場所において交付する。郵便で請求する場合は35円切手を同封されたい。
札幌市北3条西6丁目 北海道町内 記念塔コンペ事務局
東京都千代田区永田町2丁目17-17 北海道東京事務所
大阪市北区漕艇場1 大阪ビル1階 北海道大阪商工事務所
B5版横16ページの要綱が当時としては貴重なカラー印刷され、東京と大阪にも置かれた。
●主要日程
・質疑応答受付 昭和42年6月20日
・質疑応答〆切 昭和42年7月25日
・応答書発送 昭和42年8月25日頃
・設計図書の受付開始 昭和42年10月15日
・設計図書の受付締切 昭和42年10月31日
道百年記念と設計競技応募要項に対する質疑応答は82点質問数にして470問を超えた。事務局は質問を整理し298問にして回答し、印刷物として公表した。
●設計図書
・配置図 縮尺1/1000
1面 1面図のハッチ部分の範囲とする。地盤高の表示は標高による。高低差がある場合はそれがわかる程度の表現とし、標高なり等高線で示すのは自由とする。
・平面図 縮尺1/200
3面 但し面数の増減は差し支えない
・立面図 縮尺1/200
2面
・断面図 縮尺1/200
1面 塔の構造を説明しうる縦断面図
・外装仕上詳細図 縮尺1/20~1/50
主要部分
・透視図
1面
・説明書
設計趣旨(字数は800文字程度)
工事概算書(園地造成工事費は除く)
模型写真を説明書中に添付することはさしつかえないがその大きさはキャビネ版程度とする
模型は受理しない
・提出部数 図面は各1部 説明書11部
●審査
・審査会 審査会は下記委員で構成する。(アイウエオ順)
阿倍 議夫(北海道文化放送社長)
大野 和男(北海道大学教授)
島本 融(北海道銀行会会長)
関 文子(北海道家庭裁判所調停委員)
高山 英華(東京大学教授)
谷口 吉郎(東京工業大大学名誉教授)
田上 義也(田上建築政策事務所所長)
前田 義徳(日本放送協会会長)
横山 尊雄(北海道大学教授)
審査会は、応募設計図書を審査し、最優秀作品1点、優秀作品3点、準優秀作品数点の入賞作品を選ぶ。
・入賞発表 昭和42年12月上旬頃までに公表する
●賞金
・賞金 賞金の総額は550万円とし、最優秀作品及び優秀作品の賞金は各100万とし、十優秀作品数名には150万円を等分する
●設計監理
・設計監理 この塔の実施設計は、最優秀作品の設計者に委嘱する。ただし、最優秀作品設計者が施工業者に所属する場合には、関係期間中所属業者との身分の分離を必要とする。
・審査会が設計者の実施設計に関し、とくに必要と認めたときは、設計者が自ら選び、かつ審査会が適当と認める建築家と共同しなければならない。
・この塔の工事監理は、実施設計者と期成会が協同して行う。
これ以前、日本の設計コンペはアイディアを募るものに過ぎなかった。北海道百年記念塔の設計コンペにおいて最優秀賞受賞者に実施設計、建築監理までまで任せるたのは画期的なことだった。
●著作権
・最優秀作品 主催者は、最優秀作品をこの塔の建設に使用する。
・入賞設計図書 入賞設計図書の著作権は、それぞれの設計者に帰属するが、主催者は必要な公表には入賞設計図書を使用できるものとする。
・応募設計図書の展示 応募設計図書は、審査終了後に一般に展示する。但し、応募案が多数の場合は入賞作品限ることがある。
設計の著作権は設計者にあるとしている。。すなわち北海道百年記念塔の設計著作権は井口健先生にあるのである。
●設計条件
・構想 この記念塔は、北海道百年を記念して建設されるものである。したがって開発に尽くした人々の労苦に感謝する敬虔な心と、さらに未来に向かって輝かしい郷土を建設しようとするたくましい道民の意欲を造形的に表現するものでありたい。なお、この道は展望を目的とするものではないが、塔からの眺望を可能とするスペースと建設の趣旨を象徴するものを置く記念的なスペースを設けることが望ましい。
・高さ 高さは設計地盤面より100mとする。
・仕上げ 外部仕上げは特に次の点に留意されたい。
(ア)耐久性のあるもの、特に頭蓋に対応すること。
(イ)昼前に置いて航空機から4人が容易な色調であること
内部仕上げは自由とする。
【引用参照出典】
『北海道百年記念塔建設競技実施要綱』1967・北海道百年記念塔建設期成会
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